三色の茶碗

JUGEMテーマ:ものがたり

 

 近所の神社で定期的に開かれる骨董市に出かけた。特に探しているものがあったわけではないので、適当にぶらぶらする。すると綺麗な茶碗を見つけた。艶の強い青緑のお茶碗で、何だか愛らしく思える。その色合いも、その形も。値札を見るとそんなに高くなかったので、購入することにした。でももし値段が高かったとしても買ってしまったかもしれない。それくらい、何というか『ピン』ときたのだ。こういうのをまさに衝動買いというのだろうと思えた。

 その茶碗を欲しいと店員さんに言うと、これ一つでは売れないと言われた。何でも茶碗は三つがセットになっていて、セットでなければ売れないのだという。なるほどよく見ると、お茶碗は三つ並んでいた。私の気に入った青緑のお茶碗の隣に赤紫のお茶碗、そのまた隣に黄色のお茶碗が。どれも艶やかな色彩で、愛らしかった。もちろん値段は三倍になってしまうけど、他の二つもまずまず気に入ったので、セットで購入した。もともと何も買うつもりがなかったので、財布の中はほぼ空っぽになってしまった。けれどその分、私の気持ちはウキウキしたりしていたけど。

 家に戻るとさっそくテーブルに三つのお茶碗を並べてみる。三つのそれぞれが、午後の日差しを絡め取るように輝き綺麗だった。私は一人暮らしだから、三つ同時に必要になることはまずないだろう。最初に出会った青緑を日常的に使って、後の二つは取っておこうか。それとも日替わりで、順番に使うのがいいだろうか。今はもう、三つ全部に魅了されているから。などと考えながら三つのお茶碗を眺めていると、茶碗の中から童子が顔を出した。

 青緑の茶碗からは青緑の童子が。赤紫の茶碗からは赤紫の童子が。黄色の茶碗からは黄色の童子が。

 三人の童子がお茶碗の縁から顔だけを覗かせ、私を見つめていた。じっと見つめていた。そして笑った。それからお茶碗から転がり落ちるように出て、テーブル上に全身を顕わにした。もちろん全身もそれぞれ青緑、赤紫、黄色だった。童子たちは三人並んで立ち、私に向かって深々とお辞儀をした。背丈はお茶碗と同じくらい。お茶碗と同じように愛らしかった。それから童子たちは口笛を吹き出す。その軽快な旋律に合わせて踊り出した。手足を奇妙にくねらせる、フワフワとした踊りだった。踊りながら行進し、三つのお茶碗の周りを一周する。元の場所まで戻ってくるとまた深々とお辞儀し、それぞれのお茶碗の中に還っていった。

 ああ、だから三つのお茶碗はセットだったのだな。と私は納得した。

 結局、三つの茶碗を使用することはなく、それらは窓辺の棚の上、丁度私の目線の高さに並んでいる。天気の良い午後に何気なく目を向けると、顔だけを覗かせる三人の童子と目が合ったりする。

 

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