War and Demon

JUGEMテーマ:ものがたり

 

 空全体が黄土色に暗んでいるのは、破壊兵器のせいだ。

「ある男がいた。愚直な男だった。長く長く続く世界戦争を終わらせる方法はないかと、男は深く深く思考した。そして男は儀式を行い悪鬼を召喚した。そして悪鬼に己の全てを差し出し、その代償として終戦を貰い受ける契約を交わそうとした。しかし悪鬼はせせら笑った。争いや憎しみや悲しみこそ俺様のエナジーなのに、そんな契約を受けるわけがなかろうと。そこで男は、自身を悪鬼にしてくれと願った。悪鬼は男から魂を奪い、その代償に男を悪鬼へと入門させた。新しい悪鬼が最初にしたことは、自分の心臓を握り締めることだった。そうやってその心臓に蓄えられた記憶を絞り出した。自分が何故悪鬼になることを望んだのかという記憶を。新しい悪鬼は一人の愚直な少年を見いだし、こう語った。この世界戦争を終わらせることを俺に願え、俺はそのために悪鬼になったのだ、と。少年は自分の魂と引き替えに終戦を望み、それは新しい悪鬼によって成就された。争いがなくなり、憎しみがなくなり、悲しみもなくなり、新しい悪鬼はエナジーを失った。その結果、悪鬼は聖騎士団によって成敗された。その翌日、次の世界戦争が始まったんだ。以来三百年間、世界戦争は続いている」

 一番新しい悪鬼は一気に語り終え、自身が見いだした愚直な存在をじっと見つめた。

「この世界戦争を終わらせることを、俺に願ってくれまいか」

 悪鬼の言葉に、愚直な存在は何度も何度も首を傾げる。その相貌からは何の感情も読み取れない。そもそも感情を表現するための機能を、その相貌は有していなかった。

「私にはまだ魂がありません。だからあなたに願うことはできません」

 キラキラと弾けるような声で、愚直な存在は応えた。

「そうか、おまえもまだ魂を持っていないのか」

 悪鬼は翻り、漆黒の翼を撓らせて黄土色の中空に舞い昇った。どうしてもっと早く、まだ自分以外の人間が残っているうちに悪鬼になることを決断できなかったのかと後悔しながら。それでも悪鬼は探し続ける。魂を持つAIを。

 

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